"シティ・ポップ好きなあなたにもオススメしたい、時代を超えて愛されるAOR5選" 〜ボズ・スキャッグス、ネッド・ドヒニー、ペイジズ、ナイトフライトからジョン・メイヤーまで〜
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"シティ・ポップ好きなあなたにもオススメしたい、時代を超えて愛されるAOR5選" 〜ボズ・スキャッグス、ネッド・ドヒニー、ペイジズ、ナイトフライトからジョン・メイヤーまで〜

ポップス・シーンにおける80's、90'sリバイバルの大ヒット、さらに動画配信サイトや音楽サブスクリプション・サービスの影響もあって、いまや誰もがいつの時代の音楽にも「古い/新しい」の壁を取っ払って並列に触れる事ができるようになりました。近年重要なキーワードとして取り上げられる事の多くなった音楽ジャンル「シティ・ポップ」はまさにこういった流れの中で注目され、過去の音楽の総称としてだけでなく、その影響が次世代の奏る音楽にも引き継がれています。
今回の記事ではシティ・ポップにハマったという方のために同じく都会的でオシャレなサウンドで80年前後一大ブームを巻き起こし、今なお愛される洋楽ジャンル「AOR」を紹介したいと思います。
AORの解説をDJ/キュレーターのTJOさん、そして、今聴くべき楽曲5選をAORならこの人!と評されるディレクター有田さんに解説してもらいました。

AORとは?

AORという言葉は「Adult Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)」の略語。主に大人向けのロックとして1970年代後半から使われている言葉で、この呼び名は日本で生まれたものです。
ちなみにアメリカでAORというと=アルバム・オリエンテッド・ロックとして、曲単位よりもアルバム全体で完成度の高いアルバムを表現するのに使われ、意味合いが変わります。サウンドの特徴としては、ロックを基調としながらもジャズやフュージョン、R&B、ファンクなどのブラックミュージックの要素が色濃く反映された都会的で洗練されたオシャレなもの。中にはボサノヴァやハードロックの要素が入ったものもありますが共通しているのは一流のスタジオミュージシャンによる緻密に構成されたメロディやグルーヴで完成度が高く、その名の通り「大人の」鑑賞にも耐えうる音楽といったところでしょうか。そういった点から海外では「アダルト・コンテンポラリー」などとも呼ばれています。
グルーヴィーでノリの良い曲からメロウでスイートな曲まで様々なタイプがありますが、その洗練されたグルーヴはいつの時代もDJやトラックメイカーから愛され、クラブ・ミュージック・シーンで何度も再評価され今の時代のニューディスコやブギー・ブームの源流になったり、ヒップホップやハウスなど様々なジャンルにサンプリングされ新しく生まれ変わっています。AORという言葉は主に当時の洋楽のことを指しますが、同時代に日本人アーティストから発信されていた都会的で洗練されたサウンド=シティ・ポップが好きになった人、さらに80's、90'sリバイバルが席巻している現行のチャート・ミュージックが好きな人にも親和性が高く、仮に初めて聴いたとしても、どこか耳触りが良かったり、聴き馴染みがあると思います。ぜひここから紹介される楽曲を通じて新しい出会いを楽しんでください。

1. Boz Scaggs “Lowdown” [1976]

それじゃ、TJOさんが言うところの“都会的で洗練されたグルーヴ”ってナニ?っていう質問には、この曲を聴いてもらうのが一番。ドラム~ベースのイントロから疾走感のあるサウンドは、2021年の今日でも、クルマのCMに使われそうだと思いませんか。まだ録音スタジオにPCはなく、すべての楽器を人間が演奏し、編集していた時代。後にTOTOを結成した凄腕ミュージシャンたちによるスリリングな演奏は、今となっては奇跡といえるのかもしれません。ちなみに1976年、AORの元祖=ボズ・スキャッグスがリリースしたこのアルバム『Silk Degrees』から、AORの歴史が始まったといっても過言ではないでしょう。

2. Ned Doheny “Each Time You Pray” [1976]

AORを語るうえで、“ウェストコースト”、“カリフォルニア”の風土は切っても切り離せないでしょう。ボズ・スキャッグスも、このネッド・ドヒニーも音楽産業の都=ロサンゼルスをベースに活動をしていました。この曲の演奏の端々から漂うウェストコースト特有の“抜け感”や“ユルさ”は、今も私たち日本人にとって憧れ。ちなみに、ネッドはLAを代表する大富豪ファミリーの御曹司であったりもします。1976年リリースされた彼のアルバム『Hard Candy』は、US本国ではまったく売れませんでしたが、2000年代に入って海外のオタク的な音楽好きの間で再発見されるという不思議な運命を辿りました。

3. Pages “Who’s Right, Who’s Wrong” [1976]

AOR“沼”にハマり始めたら、参加ミュージシャンや楽曲を提供している作家が気になってくるものです。ペイジズの中心人物:リチャード・ペイジと、ケニー・ロギンスが共作したこの曲。R・ペイジは80年代に入るとMr.ミスターというロック・バンドを組み、「Kyrie」、「Broken Wings」という80’s洋楽を代表するNo.1ヒットを放ち、ソングライターとしてもマドンナに楽曲を提供するほどの成功を収めました。またK・ロギンスは、80年代には映画『フットルース』、『トップ・ガン』の主題歌で“サントラの帝王”と呼ばれましたが、それ以前にはドゥービー・ブラザーズに「What A Fool Believes」を提供し(M・マクドナルドと共作)、グラミー賞最優秀楽曲賞を獲得するなど、AORシーンを代表する作家としても活躍していました。K・ロギンス自身のアルバムでもこの曲を歌っているのですが、そこにはコーラスとしてあのマイケル・ジャクソンの名前が!お気に入りのミュージシャンを追いかけて、意外な発見にニヤリとする、これがAORマニアの密かな歓びなんです。

4. Niteflyte “If You Want It” [1979]

大胆ですが、“シティ・ポップは、歌謡曲とAORの間に生まれた子ども”と断言します。TJOさんの文章にもある通り、AORの魅力は世界中のさまざまな音楽のイイとこ取りをした雑食性にあります。それ故に、当時の日本のミュージシャンや歌謡曲の作家は、AORから強いインスピレーションを得ていたことは想像に難くありません。このナイトフライトはマイアミをベースに活動し、リゾート感のあるディスコ・サウンドはソウル・マニアもうならせる存在です。イントロの印象的なギターのカッティングを聴けば、シティ・ポップのある名曲を思い浮かべるかもしれませんが、それを口にするのは野暮というもの。若き日の山下達郎と吉田美奈子がライヴでこの曲をカバーしたことでも知られています。

5. John Mayer “New Light” [2021]

オリジナルのAORの全盛期が70年代後半から80年代であることは間違いありませんが、2021年の今もAORは脈々と息づいています。例えば、新作『Sob Rock』をリリースしたジョン・メイヤー。ポップから始まり、ジャズ、ブルース、カントリー・・・などあらゆる音楽要素を取り入れ、超実力派のミュージシャンたちを絶妙に配置して録音しながらも、独特の“抜け感”をまとったサウンドを常に提供してくれています。この曲を聴いて、フリートウッド・マックを連想したAOR好きも多いとか。他にも、トム・ミッシュやサンダーキャット、ムーンチャイルドといった気鋭のアーティストも、AORという切り口で聴いてみると新たな発見があるかもしれませんよ。

以上、ぜひ他にも名曲が詰まったプレイリストであなた好みのAORを探してみてはいかがでしょうか?

AOR解説 by TJO
楽曲紹介 by SMJIディレクター有田

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