クラシック音楽界最大のイベント!ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを10倍楽しく見るトリビアをご紹介!
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クラシック音楽界最大のイベント!ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを10倍楽しく見るトリビアをご紹介!

ソニーミュージック|洋楽 note

【1/26追記あり】日本で一番視聴率が高いテレビ番組といえば「NHK紅白歌合戦」ですが、世界で一番多く視聴されている番組をご存じでしょうか?

…それこそが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下ウィーン・フィル)の「ニューイヤー・コンサート」なのです!お正月元日の夜、なんとなくチャンネルを合わせていると、ふとものすごく豪華なコンサートの様子が映っているのをご覧になったことがある方、決して少なくないのではないでしょうか。毎年1月1日に世界90か国以上に生中継され、5000万人以上がクラシック音楽界最大といっても過言ではないコンサートを見ているのです。

時差が8時間あるウィーンで午前11時15分に始まるため、日本ではまさにゴールデンタイムに放送されるこのコンサート、今年の元日はウィーン・フィルが創り出す美しい音楽の世界と共に新しい年を華やかにお祝いしてみませんか?
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♬ニューイヤー・コンサートの歴史

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの始まりは意外にもそこまで古くありません。もともとはナチス政権により暗い時代を迎えていた第二次世界大戦中、オーストリアがドイツに併合されていたころのことです。オーストリア国民の反ナチスの思想を抑えるため、ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカを演奏するコンサートが1939年12月31日に行われたのがはじまりでした。そのためか、楽しく華麗な楽曲が次々と演奏される、“楽しみ”に特化したプログラムになっているのかもしれません。ちなみに、最初は「ヨハン・シュトラウス・コンサート」または「フィルハーモニー・アカデミー」と呼ばれていましたが、戦後、1946年1月1日のコンサートから「ニューイヤー・コンサート」という名前に変わり、新しい年を祝う国民的行事として現在まで愛され続けています。

♬“豪華絢爛!”会場はどんなところ?

会場となるのは、「ウィーン楽友協会(独:Wiener Musikverein)」。1870年、皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の命によって開館しました。ウィーンの音楽芸術の中心地であり、ウィーン・フィルの本拠地としても知られていますが、この中にある大ホール、通称「黄金の間」で演奏が行われます。

ムジークフェライン外観

“世界三大コンサートホール”の一つであり、ギリシャ古典の建築様式が随所に取り入れられた造りはまさに圧巻で、壁や天井、柱(“カリアティード”と呼ばれる黄金の女神像になっています)、さらにパイプオルガンに至るまで、“黄金”に輝いています。スワロフスキーのクリスタルがまぶしい巨大なシャンデリアも圧倒的な存在感を放っており、世界から注目されるコンサートの会場にふさわしい豪華絢爛な場所なのです。

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♬とってもレアなチケット、入手方法は?

入手方法としては公式サイトでの<抽選>への申し込みが挙げられます。(毎年2月ごろに1か月間申込期間が設けられ、そのあと抽選が行われます)ただし、限られた席数を世界中からの抽選で取りあうため、ものすごくレアなチケットになっています。個人で入手することはほぼ不可能といえるでしょう。そのため、たいていは旅行会社が確保したチケットやツアーを利用する方法が一般的です。ちなみに正規の価格は35ユーロ(約4,500円)~1200ユーロ(約15万円)ですが、当然代理店を通しての購入はこれよりも高い金額となります。

♬エンタメ要素満載のプログラム

プログラムは伝統的なウィーンの音楽を演奏することにこだわっており、“ワルツの父”と呼ばれるヨハン・シュトラウス1世や、その息子“ワルツ王”ヨハン・シュトラウス2世をはじめとするウィーンの作曲家たちによるダンス曲のワルツ、ポルカ、マーチが演奏されます。“伝統”という言葉や舞曲の名前の羅列に「なんだか難しいかも?」と思われてしまうかもしれませんが、むしろ逆です。これだけわかっておけば、もうあなたはニューイヤー・コンサートの世界に入り込んでいるも同然!思わず体を動かしたくなるような楽しいリズムが貫かれた楽曲たちはどの曲もシンプルに美しいメロディですし、時には笑い声や銃声、かっこうの鳴き声などの効果音も使われ、様々なエンターテイメントがギュっとつまったものなのです。

演奏曲には、「フェニックス行進曲」「朝刊」「天体の音楽」「シャンパン・ポルカ」「夜遊び」など楽しいタイトルのついたものが多く、そのイメージを探しながら聴くだけでも十分に音楽の魅力を味わえますが、いずれも基本的にはダンス音楽によって書かれています。そこで、その基本となるダンス音楽についてここで確認しておきましょう。そのリズムを感じながら、楽曲の表すイメージの世界にぜひ浸ってみて下さい!

動画:2021年ニューイヤー・コンサート(リッカルド・ムーティ指揮)のハイライト映像

【ウィンナ・ワルツとは?】ワルツといえば3拍子の踊り…ということで皆様もよくご存じだと思います。でも、ニューイヤーコンサートで演奏されるワルツを聴いてみると、何か不思議な感じがあると思います。「1,2,3」のリズムが少しバラバラなような…。まさか一流オーケストラが3拍子を刻めない!?…まさかそんなことはありません。実は彼らが演奏しているのはワルツといっても「ウィンナ・ワルツ」。このワルツでの3拍子は、3拍が均等な長さを持たず、2拍目をやや早めにずらすように演奏され、特別な雰囲気を作り出しています。
【ポルカとは?】もともとはオーストリアの近隣国であるチェコ発祥の舞曲で、19世紀後半に流行した4分の2拍子の生き生きとした性格の舞曲です。                     
【マーチとは?】「行進曲」と訳される通り、もともと行進を規則正しく行うために用いられる実用的な音楽で、規則的なリズムと構造を持っていますが、やがてその行進の様子を描いた音楽が生まれるなど、芸術性の高いものが生み出されていくようになりました。

♬観客席も豪華!

演奏はもちろんですが、映像ならではの楽しみがあります。豪華絢爛な黄金のホールに飾られる大量のお花たちです。毎年、ため息が出るほどに美しく華やかな飾り付けがされています。ビッシリと敷き詰められたお花は毎年趣向が違い、その年ごとのテーマがあるのかどうかはわかりませんが、南国のフルーツが飾られた2017年の指揮者が南米出身のグスターボ・ドゥダメルだったこともあり、指揮者や曲目などにあわせてセレクトされているように思われます。

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♬1度で2度美味しい?😋

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのTV中継では、通例では毎年2曲、ウィーン国立バレエ団によるバレエを楽しむことができます。ウィーンの名所旧跡を舞台に演じられる、美しい衣装をまとったウィーン国立バレエ団の洗練されたダンスを見ながらワルツやポルカを聴くことで、より立体的に楽曲の世界を味わうことができるはずです!なお、来年はヨハン・シュトラウス2世の「千一夜物語」にウィーン国立バレエ団が出演します。シェーンブルン宮殿を舞台にオリエンタルな世界観をバレエでどのように描き出すのか、期待が膨らみます!もう1曲は「ニンフのポルカ」で、こちらはウィーンにある有名なスペイン乗馬学校の馬たちが「出演」するそうです。

♬アンコールの“お約束”

ニューイヤー・コンサートでは本編の後、アンコールが3曲演奏されます。1曲目は毎年異なりますが、2曲目3曲目は“お決まり”の曲なのです。まずは「オーストリア第二の国歌」ともいわれる「美しく青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス2世)。そして最後は「ラデツキー行進曲」(ヨハン・シュトラウス1世)です。どちらの曲もどこかでお耳にしたことがあるはず。

動画:ヨハン・シュトラウス1世「ラデツキー行進曲」(2021年ニューイヤー・コンサートより、リッカルト・ムーティ指揮)

なお、例年「美しく青きドナウ」の冒頭が演奏されると、一度演奏が中断されて、指揮者およびウィーン・フィルからの新年の挨拶が入り、その後ふたたび演奏されるという“お約束”があります。この新年の挨拶は、その年の指揮者により色々な趣向で行なわれるので、毎年多くの人々が注目する時間でもあります。

♬来年のみどころ

来年の指揮者は2009年、2014年に続いて3回目の出演となるダニエル・バレンボイムに決定しています。

1942年アルゼンチン生まれのバレンボイムは、10代からピアニストとして音楽活動を開始し、24歳で指揮者としてもデビュー。ウィーン・フィルと初共演したのは1965年のことで、その時はピアニストとして、でした。60年近い付き合いを通じてウィーン・フィルとも気心が通じる関係を築いていて、2020年6月、コロナによるロックダウンの解除直後、ウィーン・フィルが初めて開催した演奏会を指揮したのもバレンボイムでした。

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今年のニューイヤー・コンサートへの登場は、80歳になるバレンボイムへの篤い信頼の証。息の合った名コンビならではの自由自在な演奏が聴けること間違いありません。バレンボイムはまた、イスラエルやパレスチナ、アラブの国々など政治的に対立する国々の若手演奏者を集めてオーケストラを組織するなど、中東の障壁を打ち破ろうと心を砕いています。第2部で「ペルシャ行進曲」や「千一夜物語」などの作品が演奏されるのは、そういうバレンボイムの思いを反映しているのかもしれません。
それ以外にも、ユネスコの世界遺産条約制定50周年、作曲家のツィーラー没後100年など、今年のニューイヤー・コンサートの隠されたテーマもいくつかあるようです。

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全世界にファンがいる、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートにはたくさんの注目ポイント、楽しみ方があります。ぜひ様々な角度からコンサートをお楽しみいただき、素敵な音楽と共に素晴らしい1年を迎えてください!!

1/26追記|2022年 パンデミックからよみがえる特別な公演が無事開催!

世界的なパンデミックから不死鳥のようによみがえる、2022年の特別なニューイヤー・コンサートが無事開催されました!当初フルキャパシティの観客を入れて予定されていた2022年のニューイヤー・コンサートでしたが、開催直前にオーストリア政府の規制により観客を半分の1000人に限定しての開催。元日の午前11時15分からスタートした地元オーストリアでは、TV視聴率が何と60%を超え、2014年以来の高視聴率を記録。オーストリア国内だけで116万人が見た計算となります。

2021年は無観客の中での開催でさみしい想いもしましたが、2022年は観客が半分・マスク着用とはいえ、客席に華やぎが戻りました!定番の「美しく青きドナウ」「ラデツキー行進曲」などに加えて、ツィーラー没後100年メモリアル、ヨーゼフ・シュトラウス生誕195年など、2022年のさまざまなアニヴァーサリーなどテーマ性を織り込んだ多彩な作品で構成された今年のコンサートは、ニューイヤー・コンサート初登場曲も6曲含まれています。当日の曲目はこちら

“新年の挨拶”では、通例の「明けましておめでとう」の年始の挨拶に加えて、今年の指揮者であったバレンボイムが約2分間にわたって英語でスピーチ。「このコンサートでは、数多くの音楽家が一つの『共同体』になっています。このようなことが現在の規範になるべきなのです」と、コロナによって人と人とが離れていくことへの警鐘を鳴らし、つながりを持ち続けることの重要性を訴えました。続く「ラデツキー行進曲」では客席が一丸となった拍手を巧みにコントロールして、華やかにコンサートを締めくくりました。

ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートはデジタル配信中!国内盤CD発売となりました!映像はブルーレイで2月16日に発売となります。

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▼ライター:長井進之介 プロフィール

国立音楽大学大学院修士課程伴奏科を修了し、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。複数の音楽雑誌でレギュラー執筆を担当し『OHHASHI いい音をいつまでも』をはじめ著書も多数。男声オペラ歌手とのユニット「canto cube」のピアニスト。アンサンブルを中心とした演奏、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターなど、幅広く活動を展開。現在はナレーションの修業中である。Twitter / Instagram

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