読めば納得!人気HIPHOP YouTuber, Shama Stationが【HIPHOPが生んだロックスター、トラヴィス・スコット】の世界的人気の謎を徹底分析!
見出し画像

読めば納得!人気HIPHOP YouTuber, Shama Stationが【HIPHOPが生んだロックスター、トラヴィス・スコット】の世界的人気の謎を徹底分析!

“If I take you to my past, you will be traumatized.”
俺の過去を味わったら、お前はトラウマになるだろうな - “STARGAZING”

Spotifyのマンスリーリスナー4500万、マクドナルドとの限定コラボフィギュアは570万円のプレミア価格が付き、ライブは毎回即完売、いま世界中の若者が熱狂するアーティスト、トラヴィス・スコットとは一体何者か。

テキサスの犯罪多発地帯に生まれ、一時はホームレスになるもやがて時代を塗り替えるユースカルチャーのシンボルへと成長した男の3つの魅力に、HIPHOPファンから根強い人気を誇る人気YouTuber、Shama Staionが迫る。


【異次元の没入型ライブ体験、La Flameの世界】

「生き残った、無事だ」- “Look Mama I Can Fly"(Netflixドキュメンタリー)

トラヴィス・スコット最大の魅力は爆発的なエネルギーが濃縮された究極の没入型ライブ体験である。ライブにおいてトラヴィスは自分の事をLa Flame(炎)と称し、普段メディアに露出する際の寡黙なイメージから一転してRagersと呼ばれるファン達へ狂気的な熱量を注ぎ込む。ステージの巨大スクリーンには炎や宇宙のエフェクトがかかったLa Flameが映し出され、天井には本物のローラーコースターが走り、サイケデリックな重低音が爆音でフロアを振動させる。1曲ごとに目まぐるしく変わるその鮮烈な演出によってぼかされてゆく現実と異次元のはざまで、Ragersはお互いに体をぶつけ合い、大合唱し、自分たちの存在を噛み締める。

“It aint a mosh pit if aint no injuries”
ケガ人が出ないなら、それはモッシュじゃない
“I got ‘em stage divin’ out the nosebleeds”
俺はステージからダイブして、鼻血を出してる - “STARGAZING”

HIPHOPが時代を制した現行の音楽シーンにおいて、パンクやヘヴィメタルの代名詞でもあったモッシュは2015年頃から突如現れたXXXテンタシオンやスキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッド、デンゼル・カリー、スーサイドボーイズ、プレイボーイ・カーティやリル・パンプなどといったアメリカ南部のSoundCloudラッパー達によって受け継がれ、トラヴィスによってHIPHOPの持つ新しい側面として定着した。

“They keep on callin’ up, it’s getting hectic”
みんな声を上げまくり、熱狂はどんどん高まっていく
“Like we projected”
まさに計画通りって感じさ - “STARGAZING”

モッシュ、ステージダイブ、クラウドサーフは当たり前、時に“暴動”と称されるほど激しいライブでも世界中から多くの若者が殺到するのには、彼のファン1人1人への徹底的な配慮とサービス精神にあった。どんなに激しい曲の最中でも会場全体を注意深く見渡し、失神した人が出たときはその都度ライブを一旦停止させ安全が確保されてからまたその曲を始めからやり直す。

時にはファンをステージに上げて一緒に歌い、最前列には服や限定スニーカーをプレゼント、またある時はリリックを全て覚えていたファンに自前の指輪をプレゼントしたりと、一生の思い出となる夢の様な体験を惜しみなく提供する。ライブの序盤で足を骨折した時も片足でライブを完遂したり、途切れ途切れでしか歌わないラッパーが多い中トラヴィスはほぼ全ての歌詞を全身全霊で歌い切る。

こうしたトラヴィスの熱量や心遣いによってRagersは“最悪トラヴィスが助けてくれる”という共通認識の下、安心して全力でブッ飛び、持てるエネルギーを全て解放してそれに応える。この両者の強烈なエネルギーが交わった時、狂わしくも秩序が保たれた世界最高峰のショーが完成するのだ。

“Fuck the club up, fuck the club up”
クラブをぶっこわせ、クラブをぶっこわせ
“Fuck the club up, fuck the club up”
クラブをぶっこわせ、クラブをぶっこわせ - “NO BYSTANDERS”


このようなクレイジーな異空間に放り込まれたRagersはその様子をストーリーでシェアし、より多くの若者を惹きつけるサイクルが生まれる。こうしてトラヴィスのライブを経験した事が一種のステータスとなり、さらなるRagersが生まれるきっかけとなるのだ。ストリーミングサービスの普及によって音楽の消費が早まり、プラスαの感動体験が求められる様になった現在の音楽シーンにおいて、トラヴィスはその事の重要性を理解しているからこそ、他では味わえない強烈なライブをもって曲に“思い出”という付加価値を焼き付ける。トラヴィスの曲はこの体験を経て、初めて完成するのだ。

「ぶっ飛んだ、死ぬかと思った」- “Look Mama I Can Fly"

記憶とリンクする音楽、それが彼の曲をより一層味わい深いものへと成熟させる。

【サウンドによるストーリーテリング】

トラヴィスの2つ目の魅力は独自なサウンドを用いたストーリーテリング能力である。そしてそれを可能にするのが「響き」と「ビートスウィッチ」だ。

“For this life, I cannot change”
この生活は変えられない
“Hidden Hills, deep off in the main”
ヒドゥンヒルズ(トラビスの住む高級住宅街)で本命の女と深く愛し合う
“M&M's, sweet like candy cane”
M&M(MD**)はキャンディケーン(Candy K=交際していたカイリー・ジェンナー)の様に甘く
“Drop the top, pop it, let it bang”
全開のオープンカーで一発キメてはじけるのさ - “BUTTERFLY EFFECT”

「響き」

トラヴィスはデビュー当初からLo-fiなトラップビート、オートチューン、そしてそこにサザンHIPHOPのずっしりとしたシンセサウンドにリヴァーブをかけて実現させる「響き」を重視したサイケデリックサウンドを掛け合わせる事で、イヤホンやヘッドホンで聞いただけでも実際にライブ会場にいるかの様な臨場感と没入感を体験できる「完全ライブ仕様の音」を開発する事に成功した。この「響き」に上乗せされる感情不明でモノトーンな歌声は、聴く者をトラヴィスの作り出すサイケデリックでダークな世界観へ誘い、鼓膜を通じて脳を振動させる。

「ビートスウィッチ」

“Got a thousand kids outside that’s tryna come alive”
生きようと必死になってる少年たちが何千人と来てる
“’99, took AstroWorld, it had to relocate”
99年、アストロワールドは奪われた、どこかに移転しなきゃならなかった
“Told the dogs I’d bring it back, it was a seal of faith”
仲間たちに「取り戻す」って誓ったんだ、信念で誓った - “STARGAZING”


トラヴィスは取り壊されてしまった地元のテーマパークAstroWorldでの体験を音で再現するべく、自身3作目となるアルバム『ASTROWORLD』に様々な仕掛けを施した。そしてそれを可能にしたのが「ビートスウィッチ」である。計17曲から構成される当作品のインスピレーションとなったAstroWorldには当時16個のアトラクションがあり、それぞれの搭乗体験がビートスウィッチを用いたサウンドやMVによって忠実に再現されている。

例えば一曲目“STARGAZING"はMayan Mindbenderという2人乗りの小さなコースターで暗闇の中を右往左往する、まさにディズニーランドのスペースマウンテンのようなアトラクションを表現していると言われている。実際に“STARGAZING”のMVではトラヴィスがキツキツのショッピングカートに乗り、薄暗い廃墟の中に広がる宇宙空間を眺めながら進むという演出になっている。さらに曲中では間奏の部分でコースターが暗闇に吸い込まれる様な音と乗客の叫び声を起点にビートが変わり、暗闇を進むコースターを表すかの様に一気にアップテンポな曲へと展開される。

そしてドレイクとの大ヒット曲“SICKO MODE"はスタートからゆっくりと上昇したのちに1度目の降下、しばらくしてまたゆっくりと上昇したのちに2回目の急降下と、合計3回の速度変化があるジェットコースターXLR-8を表しているのだが、“SICKO MODE"も同様に2度のビートスウィッチを経て3つの異なるビートから構成されている。

このようにトラヴィスはビートスウィッチやHIPHOPでは珍しい間奏部分を導入する事で、刺激的なAstroWorldでの体験を忠実に再現する事に成功にした。さらに、一貫して参加ゲストをタイトルに明記しない事でザ・ウィークエンドやジェイムス・ブレイク、フランク・オーシャン、ドレイクなどが突如現れたりと、思いがけない大物の登場に驚かされるエキサイティングな仕掛けをも作り出したのだ。


“Just hit me if anything past due”
問題があるなら、何でも俺に言ってくれよ
“Your family told you I’m a bad move”
君の家族は 俺と付き合うのは悪いことだって君に言ったね
“Plus, I’m already a black dude”
しかも、俺は黒人だしな
“Leavin’ the bathroom, my hands is half-rinsed”
風呂を出たとこさ、手のひらだけはキレイにできたよ
“If only a nigga just had sense”
この気持ちは黒人にしか分からないだろうな - “COFFEE BEAN”


AstroWorldにあった16の乗り物それぞれに対応する様に作られたアルバム『ASTROWORLD』には余計に17曲目が追加されており、この1曲だけトラヴィスのサイケデリックなサウンドとは全く違う生音を生かした仕上がりとなっているのだが、これはテーマパークでの刺激的な体験を終え、帰宅後1人で寂しげに思いにふける“しっとりとした時間”を表している。リリックもそれまでは刺激的なナイトライフを語ったものが大半だったが、この一曲だけはパートナーであるカイリー・ジェンナーとの結婚に関する話など、非常にパーソナルな心情を語っている。


“Who put this shit together? I'm the glue”
誰がこれをまとめたかって?おれがグルー(接着剤)だ - “SICKO MODE”

こうした響きや展開を重視した作曲に加え、POPミュージックのサビくらいの単語数で誰でも歌いやすい様に繰り返しのフック(HIPHOPにおけるサビ部分)を構成し、フロアが大合唱して更なる一体感を感じられる様に工夫。このシンプルな歌詞構造がHIPHOPに興味がない層すら巻き込めるほどの大衆性を生み、ジャンル自体をさらに大きなものへと成長させる。

また『ASTROWORLD』では明確な盛り上がり曲やトーンダウン曲をバランス良く配列する事で飽きが来る事を回避したり、曲同士のトランジションを極限までスムーズにしてスキップさせるタイミングを逃させる事で、アルバム全体がまるでひとつの映画かの様にストレス無く自然と完結させられる様な工夫もしてある。

“One day you'll find your purpose”
いつの日か自分の目的が見つかるさ
“Now, my show's packed out like churches”
今じゃ俺のショーは教会みたいに満員だ
“Fans never missin' out a word on the verses”
ファンは俺の歌詞を一語一句覚えてるぜ - “Backyard”

ケンドリック・ラマーやJ. コールの活躍によりHIPHOPにおけるリリックの重要性が再度見直され、フューチャーやヤング・サグがオートチューンやシングラップを用いて新時代のHIPHOPを淘汰していた最中に突如現れたトラヴィスは、リリカルでもなければオートチューンはヤング・サグ達のパクリ、サウンドはカニエ・ウェストやキッド・カディの真似事と酷評されていたが、トラヴィスは多種多様な作曲技術を掛け合わせる事でビートを駆使したHIPHOPにおける新しいストーリーテリングの形を確立。こうした様々な工夫により、トラヴィスは入れ替わりの早い現在のHIPHOPシーンでも色褪せない、記憶に残る作品を残す事に成功したのだ。

“We gon' stay on top and break the rules”
俺たちはずっとトップに居座って、ルールをぶち破っていく - “Highest In The Room”

ゲットー育ちのラッパーとは違い、大学にも通えて比較的不自由のない中流階級に育ったトラヴィスは、暴力的で偽りなライフスタイルを無理して歌わなくとも、HIPHOPサウンドを芸術作品として捉えて突き詰める事で、誰でも最高にクールなアーティストとして成功できるという事を証明し、自分と似た境遇の若手アーティスト達に多くの希望を与えた。


【親近感とユースカルチャーへの影響】

“I am a everything except a rapper"
俺はラッパー以外の全てを手に入れてる- “Apple Pie”

トラヴィスは米ビルボードのアルバムチャートで2度トップに輝き、毎回即ソールドアウトの大盛況ツアーを行うなどといった音楽面の活動の他にもSaint Laurentのモデルを務めたり、NIKEとコラボしたり、デザイナーとしてDiorとコラボしたりと様々なビジネスを行ってきた。しかしトラヴィス同様に有名になったラッパーやアーティストは他にもたくさんいるはずだが、彼ほど全てのビジネスで結果を出し続け、新たな大型コラボの依頼を次々と獲得できる秘訣とは一体なんだろうか?それはなんといっても彼とそのチームによる卓越した“プロダクトとのコミュニケーション能力”にある。



“Look at Gaga she’s the creative director of Polaroid.
I like some of the Gaga songs but what the fuck does she know about cameras?” 
レディーガガはポラロイドカメラのクリエティブディレクターをしてるだろ、おれはガガの曲で好きなのはいくつかあるけど、一体彼女がカメラの何について知ってるっていうんだよ? - カニエ・ウェスト (BBC Radioのインタビューにて)


トラヴィスの師匠カニエ・ウェストも数々の企業とのコラボを成功させてきたが、彼らに共通しているのは自分のファンの趣味趣向、消費行動をしっかりと分析した上でコラボしているという事である。

トラヴィスや彼のチームは自分達のファン層が10代から20代半ばのあまり金銭的に余裕のない若者学生で、ストリートファッションに興味があり、仲間とネットゲームをして、ジャンクフードを食べ、週末はパーティをして、一部はドラッグで日頃のストレスや悲惨な現実から逃れようとしている事を深く理解しているからこそ、彼の作るアップテンポだったりLo-fiでサイケデリックな曲や、狙ったコラボは百発百中確実に外さないのである。

マクドナルドとのコラボでは自分が学生時代に食べていたメニューを“トラヴィスセット”として6ドルという米国のマクドナルドとしては破格の値段で売り出し、フォートナイトのゲーム内で開催されたヴァーチャルライブでは現実世界での観客動員数を遥かに凌ぐ1230万人の同時接続を記録し「ゲーム×音楽産業」の新しい可能性を大きく切り開いた。他にもプレステ5や米国で若者を中心に人気なハードセルツァーというアルコール飲料とコラボしたりと、自分のコアファンが手を出しそうな商品を次々とトラヴィスカラーで染める。


“Young La Flame, ain't nothin' changed”
若きラ・フレイムは何も変っちゃいないさ
“But the chains and diamond rings”
このチェーンとダイヤの指輪以外はな - “Basement Freestyle”

トラヴィスはファンとの距離を近いものに保つため、常に親近感の維持を大切にしている。確実に誰よりもセレブなのにもかかわらずラフなグラフィックTシャツに必要最低限のジュエリーをまとい、一般的なアメリカのセレブとは逆行する様なカジュアルなファッションでメディアに露出したり、コラボイベントやポップアップにはサプライズ登場するなど、常にファンと非常に近い距離での交流を大切にしてきた。

イベントやライブでのキャッチフレーズひとつとってもそうだ。『ASTROWORLD』のツアーの際には“Wish You Were Here"「お前もここに居れたら良かったのに」、マクドナルドとのコラボの際は“say Cactus Jack sent you”「Cactus Jack(トラヴィスのレーベル)に連れて来られたと言え」というキャッチフレーズを掲げ、まるでトラビスが友達くらいの距離感で直接自分に話しかけているかのような親しい感覚を植え付ける。

写真を撮られる際には決まってうつむくなど、真似しやすいポーズを印象付ける事で誰でもトラヴィスの真似ができる様にしている事も忘れてはいけない。若者が憧れの人のファッションやライフスタイルを真似する様に、トラヴィスは次から次へと新しい提案をしていく事で彼らの願望を満たしていく。このファンとのコミュニケーションの上で成り立つ“トラヴィスは俺たちの事よく分かってるな”という感覚がさらなる親近感を生んでいるのだ。


“Practicing, have the passion, you niggas packaged different”
努力と情熱をもってお前達は違うものを包んだんだ - “90210”
(違法ドラッグで稼ぐ者がいる一方でトラヴィスは純粋な努力で大金を掴んだという意)

その結果トラヴィスは年間100億以上稼ぎ、ハリウッドにある24億の豪邸に住み、カイリー・ジェンナーと交際をしてもなお、近所のイカしたちょいワル兄さんくらいの距離感を保てており、それがファンからの信頼や定着に繋がっている。2019年に行われた第61回グラミー賞受賞式でカーディ・Bに敗れ受賞を逃した際も「トラヴィスでさえも失敗する事がある」と、一転して若者達に勇気を与えた。

“全てを限界まで挑戦する”をモットーに、挫折を味わいながらも休む事なく新しい道を突き進む事で、世界中の若者達に全力で生きる勇気といつでも帰ってこれる居場所を与え続ける。それが若者達のヒーローでありクールな味方、トラヴィス・スコットだ。

「高校時代ずっと落ち込んでいて頼る人もいなかった、彼は僕を孤独から救ってくれた、愛してるよ」- “Look Mama I Can Fly

▼トラヴィス・スコット公式ホームページ

▼ライター:Shama Stationプロフィール

Shama Station (通称: しゃます)
日本の大学を中退後、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ入学。現在は休学しHIPHOP系のYouTubeチャンネル”Shama Station”として活動中。奴隷制から遡ったHIPHOPの歴史解説動画に加え、毎週末アメリカのHIPHOPシーンに関する最新ニュースや注目の新人ラッパー、新曲情報を配信中!
★YouTubeチャンネル【Shama Station】https://www.youtube.com/channel/UCYVpHXMsZ-ECItdgEl7TBmA
★Instagram: https://www.instagram.com/simazilo/
嬉しいです!ありがとうございます!
レコード会社ソニーミュージックの洋楽セクションのnoteです。アーティスト最新情報はじめ、音楽の楽しい話をお届けします。